【美術館めぐり】ムンク展ー魂の叫びー
そのあまりにも印象的である故に多用され、有名な絵画が東京にやってくることは
個人的にはかなりのビックニュースだったので。
ムンク展ー魂の叫びー
munch2018.jp/gallery/
理由の通り、正直「叫び」以外には興味関心がなかったために、
ムンクの生涯と共に流れる展覧会の構図は退屈に思われた。
とはいえ画家にしては珍しいといえるほど多くの自画像を作品の中心とし、
カメラのシャッターを自身に向け続けた彼の考えにみるみる関心を寄せるように。
彼曰く、「私は見えるものを書くのではなく、見るものを描くのである」だそう。
この意味を解釈しようと辺りの作品をめぐりながら考えた故、どうやら彼の人生に取り巻いた家族、死、愛に関わって、作品対象における重要な視点があると捉えた。
それは、彼は単に目に見えた風景、人物をそのまま書き写すのではなく、その人物の内面に隠された苦悩、不安、悩みを、風景と混合させながら一つの作品に仕上げるということである。
その根拠として、彼は「ただ編み物をする女は描いてはならない、奥に潜んだ感情を持つ、いきいきとした人間を描くのだ」(記憶なので意訳)
とも言い放ち、表面上でなく深層の心情に迫っていく姿勢がうかがえる。
お待ちかねの「叫び」
彼が語る視点に沿い本作品も、ムンク自身の心情を風景と溶かし合わせながら見事に表現したものとなっている。
北欧に広がるフィヨルドが、その果てへ広がる日没も含め、
鮮やかで多彩なスケッチと大きくゆがむムンク本人によって
限りない不安を表すイメージに変容させている。
このように、背景をも心情の表現と混ぜ合わせ、彼の軸である、人々の内面の揺らぎを描いた作品が「生命のフリーズ」として以後連作されるようになる。
最後にひとこと
歴史絵画や風景画と違ってムンクの人間の心情に重きを置いた抽象作品の数々は、
心という現代にも通ずる感覚なので時代を超えて共鳴しやすいのでは?
より深いムンク自身の心情を読むにはもっと当時の環境や歴史について学ばないとなと痛感しました。